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2008年2月28日 (木)

天皇陛下と骨粗鬆症

http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/080225/imp0802251240000-n1.htm

宮内庁の発表によると、平成天皇陛下(74歳)の骨密度の低下が認められ、骨粗鬆症の危険があり、公務軽減の検討がなされるとのことである。

天皇陛下は2003年1月に前立腺癌の摘出術後、ホルモン治療を続けておられた。骨粗鬆症は女性が罹患しやすいが、男性の場合はエストロゲンやアンドロゲンなどの性ホルモンの低下が発症に関係する。 天皇陛下は一般の前立腺癌の患者さん同様、LH-RHアナログ製剤、抗男性ホルモン製剤の治療を受けておられる?術後約5年経過して、男性ホルモン量の減少が骨量の減少に関連していると考えられる。薬物性骨粗鬆症はステロイドが有名であるが、前立腺癌のホルモン療法と骨粗鬆症の関連について文献を調べてみた。

Preston DM.,et.al(USA)

Androgen deprivation in men with prostate cancer is associated with an increased rate of bone loss.

Prostate Cancer Prostatic Dis.2002;5(4):304-10

前立腺癌患者で、抗アンドロゲン療法を受けた人(39人)、受けなかった人(39人)で定期的(6ヶ月毎)に骨密度の測定を行なった。腰椎以外のすべての部位(前腕遠位、大腿骨頸部、股関節、大腿骨大転子)で有意に対照群と比較して、抗アンドロゲン療法を受けた人が骨密度の減少が認められた。

天皇陛下が適切な治療により、転倒による骨折を起こさないようにお祈りします。

2008年2月27日 (水)

麻疹

霧島市の国分中央高校で、2年生の生徒3人が麻疹にかかり、1週間の学年閉鎖になりました。鹿児島県内の今年の発生報告は5名。

日本は麻疹の輸出国。先進国としては恥ずかしいことである。 2007年夏に米国で流行した麻疹の感染源が日本の野球少年(12歳)であったというCDC(米国疾病対策センター)の報告があった。 

麻疹予防接種の国際比較としては、天声人語にも掲載された熊本大学の粂先生の意見を参考にされたい。

http://www.k-net.org/opinions/measles.html

全国では本年既に2200人の発生患者報告が上がっている。昨年夏大流行したことは記憶に新しいことである。

数年前まで、麻疹ワクチン接種は、予防接種法により、生後12ヶ月から90ヶ月の子供(就学前くらい)に1回のみ接種されたいた。2006年から1歳と就学前1年間の2回接種が実施され始めた。2008~2012年度は中学1年生と高校三年生にも定期接種されることになった。この方法でも、今の中学1年生は約4年間、今の小学1年生は5年間、今の高校3年生以上のある割合が有効な抗体価を持たない(つまり、麻疹に罹患しやすい)状態で放置されている。

麻疹の流行は春から夏にかけてである。昨年の夏、自分の子供には、自治体や国からの補助なく、2回目の麻疹接種を行なった。昨年夏の流行時期に一般の人は、新聞やテレビで報道されて驚き、慌てて、医療機関に麻疹抗体価の測定や麻疹ワクチン接種に問い合わせがあった。全国で麻疹ワクチンや抗体価測定試薬が不足し、大変であった。しかし、のど元過ぎればなんとかで、又、国民の多くは麻疹の恐さを忘れてしまっている。日本全国で、300万人かかってもおかしくない状態である。 発病してしまうといまだに有効な特異的治療法がない。年間数十名の死亡例がある。肺炎や脳炎にかからないためにも2回の予防接種を受けることが望ましいだろう。

2008年2月23日 (土)

ソフトドリンク、果糖と痛風

妙なタイトルである。私は痛風発作は経験していないが、アルコールと高尿酸血症、痛風との関係は有名である。NHKの「きょうの健康」2008年1月号では、東京女子医科大学の谷口敦夫准教授によると尿酸値に影響をしないと考えれるアルコール摂取量の目安を「純アルコール換算」で1日の適量を20g以内(25度の焼酎120ml、ビール500ml以内)。週2日は休肝日をつくることが望ましいと説明している。

BMJで、ソフトドリンク、果糖の摂取量と痛風危険性について報告がありました(BMJ 2008;336:309-312)。痛風発作のない46393人の男性を12年間フォロー。755人で痛風発病(1.6%)。砂糖で甘味をつけたソフトドリンクの摂取量が増えると痛風の発病が増えた。砂糖で甘味をつけたソフトドリンクを月に1杯以下の場合に比べ、週に5―6杯では1.29倍、毎日1杯では1.45倍、1日2杯以上では1.85倍痛風発作が増えた。ダイエット・ソフトドリンクは痛風発症の危険が無かった。果糖摂取を5段階に分けると、少ないほうから多い人に比較して、1.00, 1.29, 1.41, 1.84倍と痛風の危険度が増した。果糖の摂取に貢献するものとして、果汁100%ジュースや果糖の多い果物(りんごやオレンジ)の摂取量が増えると痛風の発症が多くなった。

痛風の人はアルコールの飲みすぎも、砂糖で甘味をつけたソフトドリンク、果糖の多いジュース、果物の過剰摂取も痛風発作と関連がある。

結局、痛風の患者さんは、何を飲めばいいのか。お茶、ウーロン茶、シュガーレス珈琲、紅茶だろうか?私はダイエットコーラは痛風に関係がないという報告があっても、好きでないので飲まない。

2008年1月28日 (月)

杏林

杏林大学、杏林製薬と言う名前は有名ですが

どうして、「杏林」というのだろう。

語源はwikipediaや「生薬単」(原島広至著:NTS)によると

中国の三国時代の呉の国に董奉(とうほう)という医師がいて、貧しい患者には治療代を受け取らない代わりに杏(あんず)の実を植えさせた。いつの日か実が樹となり、林となった。医師ないし名医を「杏林」と呼ぶようになった。

東洋医学においては杏(あんず)の種を気管支喘息の治療に用いてきた(杏仁、これを服用するために甘くゼリー状にしたのが杏仁豆腐である)。杏という字は、「口に入れて食べておいしい実のなる木」を表している。

喘息の患者さんが杏仁豆腐を食べて、症状が改善しましたという話は聞いたことがありませんでしたが、杏仁は使われて無いようですね。杏仁の代わりにアーモンドエッセンスが使われているそうです。

杏林大学は行ったことありませんが、キャンパスには杏(あんず)の樹がたくさん植えられており、毎年その花や実が訪れる多くの人を癒しているそうです。

杏仁は主な薬効は鎮咳作用。漢方では、鎮咳、去痰のために用いられる。

杏林製薬が「ムコダイン」(去痰剤)や「キプレス」(気管支喘息治療薬)を発売しているのも何かの縁か?

2008年1月21日 (月)

インフルエンザワクチン

インフルエンザは今年はまだ、私の周りでは流行してませんが、昨年、娘の同級生が高校入試の時に、インフルエンザにかかり、高熱で保健室で受験しましたが、体調不良で運悪く、不合格となりました。普段から、勉強ができていたので、私立の進学コースの特待生として合格していたので、多少は救われました。しかし、第一志望の公立校に合格できなかったのは残念でした。人生の大事な日に体調を崩して、不運としか、いいようがありませんでした。体調さえ良ければ、合格間違いなしだっただけに。

現在65歳以上の高齢者には、自治体はインフルエンザワクチン接種に対して公的補助をしています。それを支持する文献の一つを紹介します。公的補助はひいては医療費削減につながるからです。

Kristin L., et al, New Eng J Med 2003, 348, 1322-1332

Influenza vaccination and reduction in hosptalizations for cardiac disease and stroke among elderly

邦訳:高齢者におけるインフルエンザワクチン接種と心疾患や脳卒中での入院の減少

(要旨)

<背景>上気道感染は虚血性心疾患や脳卒中の危険を増すことと関連する。

<結果>1998-99年は、14万人、1999-2000年は14.6万人の65歳以上の地域住民。それぞれ、55.5%, 59.7%ワクチン接種率。インフルエンザワクチンを接種している群はしてない群に比べ、より合併症があったり、通院していたり、肺炎で入院の既往がある人が多かった。ワクチン非接種群では、認知症や脳卒中にかかっているヒトが多かった。インフルエンザワクチン接種群では心疾患での入院の危険性の減少(両シーズンとも19%減少)、脳血管障害での入院の危険性の減少(1998-1999:16%,1999-2000:23%),肺炎、インフルエンザでの入院の減少(1998-1999:32%, 1999-2000:29%), 全原因における死亡の減少(1998-1999:48%, 1999-2000:50%)

<結語>高齢者では、インフルエンザワクチンの接種はインフルエンザ流行時期に、すべての原因による死亡の危険率同様心疾患、脳血管疾患、肺炎、インフルエンザによる入院の危険性を減少させることと関連する。これらの所見は高齢者において、インフルエンザワクチンの有用性を示し、接種率を上げる努力を支持する。

2008年1月18日 (金)

重症睡眠時無呼吸症候群患者の予後

私の高校時代のある同級生は重症の睡眠時無呼吸症候群(SAS: sleep apnea syndome)の患者であるが、経鼻的持続陽圧呼吸(nCPAP:nasal continuous positive airway pressure)療法がうまくいってない状態と聞いている。これまで、居眠り運転事故を2回おこし、高血圧症、高コレステロール血症、肥満、糖尿病境界型を持っている。両親とも脳血管障害になった。このまま、SASの治療がうまくいかないで放置されて、脳血管障害や虚血性心疾患を発症しないか心配である。

 20年前の文献であるが、重症SASの予後に関していまだによく引用されるものを紹介する。

He J. et al: Mortality and apnea index in obstructive sleep apnea; Experience in 385 male patients. Chest 94:9-14,1988

「閉塞型睡眠時無呼吸症候群385名の男性患者における無呼吸指数と致死率」

無呼吸指数(AI: apnea index)が20以上では、20未満に比べて有意に致死率が高い。無呼吸指数20未満では8年後死亡率4%に比較して、20以上では、37%死亡する。この致死率の差は特に50歳以下の患者で顕著であった。nCPAP療法の患者は一人も死亡してない。口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP:uvulopalatopharyngoplasty)で治療した患者8名死亡し、UPPPのみでの治療群の累積生存率は無呼吸指数20以上の無治療SASの生存率と有意差がなかった。結論として無呼吸指数20以上の閉塞型SAS患者は20未満の患者群と比較して有意に致死率が高く、UPPPを受けた患者は術後再度無呼吸検査等の検討が必要である。UPPPを受けて著しい改善が得られなければ、経鼻的持続陽圧呼吸(nCPAP)療法で治療すべきである。

この文献は、日本で持続陽圧呼吸(CPAP)療法が保険適応になった根拠の一つになっている(池上あずさ他:medicina, 44,1324-1327,2007)。

2008年1月17日 (木)

経口禁煙治療薬1

本年4月頃?Pfizer社から経口禁煙治療薬(varenicline)が日本でも発売予定と聞いてます。現在、禁煙が難しい人には ニコチン代替療法を行なってます。具体的には、ニコチンパッチ(指定医療機関において保険適応あり)もしくは、薬局で買えるニコチンガム(自費)です。私の医療機関でも、ニコチンパッチ療法行なってますが、他の医療機関同様成功率は必ずしも満足いくほど高くありません。

たばこ関連疾患は皆さんご存知のように肺癌が有名ですが、他に食道癌、舌癌、口腔癌などの癌、消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎)、動脈硬化性疾患(高血圧症、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞)などたくさんあります。女性の関心のある、「しみ」、「しわ」も関連します。たばこは百害あって一利なしですが、喫煙者(つまりニコチン中毒患者)の中で止めたくても、止められない方にはこれまでのニコチン置換療法でうまくいかなかった人には朗報です。私の経験では、喫煙がうまくいくかどうかの一番のポイントは当たり前ですが、本人がタバコを止める意志があるかどうかだと思います。心筋梗塞や脳梗塞に以前かかって、再発の恐れがあるのにタバコを止めない患者さんは少なからずいます。当院の禁煙外来に来られる患者さんは、来院しただけで、まず半分成功していると思いますと説明するのはそのためです。

結核

昨日(2008年1月17日)NHK TVの ためしてガッテン を見ていたら 結核の特集でした。題名が「なぜ今!?目覚める結核 感染者2800万人の真実」。色々な病気がある中で珍しい企画と思いました。

結核は現代でも発症率が減少してきているとはいえ、診断が遅れると、治るのに時間がかかるうえに、周りの人に感染させる恐れがあります。

咳や痰などの症状が長引いて治りにくいときには、気管支喘息、肺癌などのほかに肺結核の可能性もありますから、呼吸器内科の医療機関を受診することをお勧めします。

2008年1月16日 (水)

睡眠時無呼吸症候群と心筋梗塞・脳梗塞との関係

「早く気づいて睡眠時無呼吸症候群」

日本大学 赤柴恒人教授

NHKのTVで2007年11月29日に放送された「きょうの健康」より

睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、心筋梗塞などで死亡する確率が健康な人より高く、寿命が短いという報告があります。

重症の睡眠時無呼吸症候群でも、治療されずに放置されているケースがありますが、治療したほうがいいですよという論文です。

この引用文献が下記です。

専門的な用語と誤訳はご容赦ください。

Marin, Lancet, 2005, 1046-1053

「閉塞型睡眠時無呼吸症候群の男性における長期心血管イベントの発症率:持続的陽圧呼吸の治療の有無による」

264人の健康男性、377人の単純性いびきのヒト、403人の軽症・中等症の閉塞型睡眠時無呼吸症候群(SAS)のヒト、235人の未治療の重症SASのヒト、372人の治療群のヒトを対象にして、致死的心血管イベント(心筋梗塞、脳梗塞)及び非致死的イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞、冠動脈バイパス術、冠動脈造影術)の発症率を平均10.1年間調べた。

未治療の重症の閉塞型無呼吸では、健康人と比較して致死的心血管イベントの危険性が2.87倍、非致死的な危険性が3.17倍と高くなる。

結語:男性では重篤な閉塞型睡眠時無呼吸のヒトでは、致死的もしくは非致死的心血管イベント(心筋梗塞、脳梗塞)の危険が増える。持続的陽圧呼吸治療により、その危険度は減少した。