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2008年2月

2008年2月28日 (木)

高橋英樹さんとSAS

俳優 高橋英樹さん(64歳)は時代劇が似合う役者さんです。「桃太郎侍」役も有名で、現在、NHK大河ドラマ「篤姫」で島津斉彬公役を好演しています。実際の斉彬公は49歳で亡くなられているので、年齢が一回り違うのはご愛嬌。

成井浩司先生(虎の門病院呼吸器科)著「睡眠時無呼吸症候群のすべて:いびきと眠気にご注意」(三省堂)の巻頭インタビューで、睡眠時無呼吸症候群(SAS:sleep apnea syndrome)で持続陽圧呼吸(CPAP)療法を受けていることが紹介されています。

成井先生自身も、SASでCPAP療法を受けておられるそうですが、高橋さんは2000年(56歳)にSASと診断されています。隣で寝ていた奥様が、大きないびきと無呼吸に気づいたそうです。日中や食後、車の中での眠気もあり、高橋さんのいびきを録音したテープ持参で、虎の門病院を受診されました。無呼吸指数が1時間に30以上と重症だったそうです。高橋さんのお父さんもいびきをかくひとで、63歳の時に狭心症で死亡してます。

以前、このブログで私が重症SASと脳血管障害、虚血性心疾患との関係を紹介してますが、まさにお父さんの死因として、SASの関連が疑われます。高橋さんは、診断された時、お父さんの亡くなられた年齢に近づいていたので、早速CPAP療法を開始し、現在も、旅先にも持ち運び、治療されているようです。

SASの約7割は肥満を伴ってますが、40歳頃から太りだした高橋さん(182cm, 86kg, BMI 26)は現在、食餌療法と毎晩の夜の散歩(1時間半)等で、肥満の解消に努めておられるようです。

肥満治療とCPAP療法で、SASをきちんと治療し、素適な演技を末永く我々に見せて欲しいものです。

天皇陛下と骨粗鬆症

http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/080225/imp0802251240000-n1.htm

宮内庁の発表によると、平成天皇陛下(74歳)の骨密度の低下が認められ、骨粗鬆症の危険があり、公務軽減の検討がなされるとのことである。

天皇陛下は2003年1月に前立腺癌の摘出術後、ホルモン治療を続けておられた。骨粗鬆症は女性が罹患しやすいが、男性の場合はエストロゲンやアンドロゲンなどの性ホルモンの低下が発症に関係する。 天皇陛下は一般の前立腺癌の患者さん同様、LH-RHアナログ製剤、抗男性ホルモン製剤の治療を受けておられる?術後約5年経過して、男性ホルモン量の減少が骨量の減少に関連していると考えられる。薬物性骨粗鬆症はステロイドが有名であるが、前立腺癌のホルモン療法と骨粗鬆症の関連について文献を調べてみた。

Preston DM.,et.al(USA)

Androgen deprivation in men with prostate cancer is associated with an increased rate of bone loss.

Prostate Cancer Prostatic Dis.2002;5(4):304-10

前立腺癌患者で、抗アンドロゲン療法を受けた人(39人)、受けなかった人(39人)で定期的(6ヶ月毎)に骨密度の測定を行なった。腰椎以外のすべての部位(前腕遠位、大腿骨頸部、股関節、大腿骨大転子)で有意に対照群と比較して、抗アンドロゲン療法を受けた人が骨密度の減少が認められた。

天皇陛下が適切な治療により、転倒による骨折を起こさないようにお祈りします。

2008年2月27日 (水)

麻疹

霧島市の国分中央高校で、2年生の生徒3人が麻疹にかかり、1週間の学年閉鎖になりました。鹿児島県内の今年の発生報告は5名。

日本は麻疹の輸出国。先進国としては恥ずかしいことである。 2007年夏に米国で流行した麻疹の感染源が日本の野球少年(12歳)であったというCDC(米国疾病対策センター)の報告があった。 

麻疹予防接種の国際比較としては、天声人語にも掲載された熊本大学の粂先生の意見を参考にされたい。

http://www.k-net.org/opinions/measles.html

全国では本年既に2200人の発生患者報告が上がっている。昨年夏大流行したことは記憶に新しいことである。

数年前まで、麻疹ワクチン接種は、予防接種法により、生後12ヶ月から90ヶ月の子供(就学前くらい)に1回のみ接種されたいた。2006年から1歳と就学前1年間の2回接種が実施され始めた。2008~2012年度は中学1年生と高校三年生にも定期接種されることになった。この方法でも、今の中学1年生は約4年間、今の小学1年生は5年間、今の高校3年生以上のある割合が有効な抗体価を持たない(つまり、麻疹に罹患しやすい)状態で放置されている。

麻疹の流行は春から夏にかけてである。昨年の夏、自分の子供には、自治体や国からの補助なく、2回目の麻疹接種を行なった。昨年夏の流行時期に一般の人は、新聞やテレビで報道されて驚き、慌てて、医療機関に麻疹抗体価の測定や麻疹ワクチン接種に問い合わせがあった。全国で麻疹ワクチンや抗体価測定試薬が不足し、大変であった。しかし、のど元過ぎればなんとかで、又、国民の多くは麻疹の恐さを忘れてしまっている。日本全国で、300万人かかってもおかしくない状態である。 発病してしまうといまだに有効な特異的治療法がない。年間数十名の死亡例がある。肺炎や脳炎にかからないためにも2回の予防接種を受けることが望ましいだろう。

2008年2月23日 (土)

ソフトドリンク、果糖と痛風

妙なタイトルである。私は痛風発作は経験していないが、アルコールと高尿酸血症、痛風との関係は有名である。NHKの「きょうの健康」2008年1月号では、東京女子医科大学の谷口敦夫准教授によると尿酸値に影響をしないと考えれるアルコール摂取量の目安を「純アルコール換算」で1日の適量を20g以内(25度の焼酎120ml、ビール500ml以内)。週2日は休肝日をつくることが望ましいと説明している。

BMJで、ソフトドリンク、果糖の摂取量と痛風危険性について報告がありました(BMJ 2008;336:309-312)。痛風発作のない46393人の男性を12年間フォロー。755人で痛風発病(1.6%)。砂糖で甘味をつけたソフトドリンクの摂取量が増えると痛風の発病が増えた。砂糖で甘味をつけたソフトドリンクを月に1杯以下の場合に比べ、週に5―6杯では1.29倍、毎日1杯では1.45倍、1日2杯以上では1.85倍痛風発作が増えた。ダイエット・ソフトドリンクは痛風発症の危険が無かった。果糖摂取を5段階に分けると、少ないほうから多い人に比較して、1.00, 1.29, 1.41, 1.84倍と痛風の危険度が増した。果糖の摂取に貢献するものとして、果汁100%ジュースや果糖の多い果物(りんごやオレンジ)の摂取量が増えると痛風の発症が多くなった。

痛風の人はアルコールの飲みすぎも、砂糖で甘味をつけたソフトドリンク、果糖の多いジュース、果物の過剰摂取も痛風発作と関連がある。

結局、痛風の患者さんは、何を飲めばいいのか。お茶、ウーロン茶、シュガーレス珈琲、紅茶だろうか?私はダイエットコーラは痛風に関係がないという報告があっても、好きでないので飲まない。

サリン

地下鉄サリン事件が起こったのは、1995年3月20日。もう、あれから13年経とうとしている。サリン(sarin)も、有機リン化合物のひとつ。中国で作られた毒入り餃子に含まれていた毒物(メタミドホスmetamidophos)が有機リン化合物であり、共通していることに気づいた。メタミドホスは-phosという名前が燐の存在が示唆されますね。

Wikipediaによると、Sarinは、1938年ナチス・ドイツで開発された神経毒の一種。有機リン系殺虫剤の開発過程で発見されたが、人体に対する毒性が高すぎたために、殺人以外の用途はない。

地下鉄サリン事件では、有機リン系中毒の解毒剤であるPAM(pralidoxime iodide)が医療機関に常備されている薬でなかったので、診断も難しかったと思われるが、特効薬の入手が困難だったようである。

有機リン製剤がアセチルコリンに結合して一定時間が経過するとエイジング(aging)とよばれる不可逆的変化が起こり、治療薬が効かなくなる。サリンは浴びてから、5時間以内に投与しなければ、手遅れとなる。

地下鉄サリン事件は異常な発生の仕方であるが、今回の中国産冷凍餃子の場合は兵庫県で1家族3名(1月5日)、千葉県1家族5名(1月22日)という小規模な発生であったので、医療機関を受診してもまずは、感染性のものを考え、どうしても診断が遅れ、特効薬による治療が遅れてしまったのではないか。縮瞳と筋攣縮が最も信頼性のある他覚的所見で、血液検査では血清コリンエステラーゼ(ChE)の低値。

これまで有機リン中毒は経験したこと無いし、又、お目にかかることのない平和な世の中を期待したいが、頭の片隅に記憶しておかなくてはなるまい。